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関わり、響きあう。 関係の画家、石川静さん

インタビュー Vol.2 

石川静さん ( 画家)

三鷹市井口 在住

響(潮)Ⅰ 72.7x90.9cm 2008.jpg

響(潮) 72.7×90.9cm 2008年

強い北風の吹く2015年1月、三鷹駅前コラルの一階コージーコーナーの店内で、三鷹に50年近く住んできた画家、石川静(いしかわ・しず)さんにお会いした。

現在は精力的に制作を続けている石川さんだが、美術大学などで学ぶ機会はなかったそう。今回は、そんな石川さんが制作を始めた時期からお話を伺った。

***

 結婚して、こどもを産んで、育てて…となったらやっぱり絵が描きたくなっちゃったんですね。ずっと絵が好きだったから。こどもが学校に言っている間に描いて。そのうち、公募展なんかにも出すようになった。初めは夫も気にしてなかったのだけど、だんだん本格的になってきて、キャンバスも大きくなってくると文句も言われましたよ。「やりすぎだ!」なんて言ってね。絵が好きで好きで、ずーっと描いているうちに40年も経っちゃった。

公募団体の中では、美術家としての経歴がないことがネックになることもあった。その後、日本美術家連盟に名を連ねることで切磋琢磨する環境を得、今まで以上に制作にのめり込んでいく。その背景には石川さんが恩師と呼ぶ、3人の画家、美術史家との出会いがあった。

◎洋画家・梶進

 梶さんは、都立高校の先生だった方なんです。

東京藝術大学 藤島武二教室の最後の学生であり、萬鉄五郎にも師事していたそう。展覧会に行って、直接弟子にしてほしいとお願いしたんです。でも、弟子はとっていないと仰って。でも個人的に絵を20枚までならみてあげるよ、って。それで、梶先生がアトリエに入っていらっしゃる間に、リビングで描きました。それで20枚描いたら本当に「はい、おしまい」って。でもその後、梶先生が私をモデルにしてくださった。そうしたら、アトリエに入れるんです。刻一刻と変わる制作の過程を見られる。あとから気づきましたけど、そうやって教えてくださっていたんですね。梶先生は、やっぱり教育者でいらした。無言の内に、先生に導いていただいていたのね。

 「何かに惚れる気持ちが人間には一番大事だ」って、いつも仰っていた。

◎洋画家・澤田俊一

 日伊友の会っていう会があったの。サロンのような感じで講演会もあって。そういう所で澤田先生にお会いしました。吉祥寺に住んでいらして、ドイツ文学を早稲田で勉強されてから、武蔵野美術大学で教えられた方。「いいんだよ。いいんだよ」って仰るの。私、迷っていて。描きたくてしょうがない。心の底から何か想いが溢れてきて、ほとんどは形にならないんだけど、やっぱり抽象的な表現でしか表せないモヤモヤとした想いがあって。でも、美術の学校を出ていないから、誰かに「抽象絵画に至る必然性がない」なんて批判されたりすると自信がもてない。でも、澤田先生は「しずさん、いいんだよ」って。「絵の具の中で這いずり回ってやっているうちに、ポッと生まれるだろう?這いずり回らないくせに、頭で考えてばっかりいるから、つまらない絵ができてしまう。」

 「いいんだ、いいんだ、しずさん。自分が思うように、ただ、自分の感性を信じて描いてごらん」って。

◎美術史家・中森義宗

 武蔵野美術大学の教授で、その後千葉大学に移られた先生。この方ともやっぱり心が響きあったんだと思うの。吉祥寺に住んでいらしてね。男の人って、偉くなると、なかなか話しかけてくれる女の人がいなくなっちゃうんじゃないかしら。私は気にせず話しかけちゃうから、きっと喜んでくだすったのね。何度か、美術館の内覧会なんかに連れて行ってくれたり、私の絵を見に来てくださったりで、私には励みになりました。

響(環) F80 2011.jpg

響(環) 162x130cm 2008年

このような恩師との出会いと関わりを通し、制作を続けてきた石川さん。自身の制作について次のように語る。

 スケッチ、 習作をするときは、よく見てとにかくたくさん描く。頭と手に覚えさせるのね。そのあと、作品にする時にはもう対象物は見ないの。自分の内側にある心象風景を見つめる。作品を描いている時は絵と自分との対話。キャッチボールをする。それが作品と自分が響き合っている状態。うまく響き合っていると、自分とキャンバスの中の絵は一体になる。途中で作品からなにも聴こえなく、感じなくなってしまったら一度絵を寝かす。そしてしばらく経ってから、また始めます。色々な方がいらっしゃるけど、私は一枚描くのにとっても時間のかかるタイプ。

関わりながら、描いていく。

描きながら、そこにいる。

石川さんの制作過程は、さながら、絵という媒体を通した自分自身とのコミュニケーションだ。石川さんの作品からは、濃厚な温度や、肌ざわりのような身体感覚に訴えるものを感じる。それは、楽しみながら絵の前にいる石川さん自身の体温なのだろう。

 ひとつのことを継続してやってきたから、色々なすばらしい人にも出会えた。

でも、だんだんと皆さんお亡くなりになったりして、批判してくれる人がいなくなっちゃった。どこに行っても私が一番おばあちゃんになっちゃって。

 でも、おばあちゃんになるのは全然恐くないのよ。家庭に縛られることもなくなって、男も女もあんまり関係なくなって。

 それが年増の醍醐味よ。

そう言って、三鷹の地に生きてきた画家は、朗らかに笑った。

2015年1月31日、於コラル1階コージーコーナー

Interview:沼田直由

Text:越川さくら

Photos:伊藤真矢子

ShizuIshikawa.jpg

石川 静

Shizu ISHIKAWA

三鷹市井口在住

*石川静 展覧会情報*

  • 三鷹アーティスツネットワーク展

  会期:2015年5月12日〜5月17日

  会場:三鷹市美術ギャラリー

  • むさしのデッサン会会員展

  会期:2015年12月2日〜12月6日

  会場:三鷹市美術ギャラリー

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