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子どもを通じて三鷹とつながる 加藤恵美子さん


インタビュー Vol.1 

加藤恵美子さん

( 画家・アトリエピッピ主宰)

三鷹市内で子ども向け絵画教室を主宰する加藤恵美子さんにお話しを伺いました。

美術の世界

私の父はものづくりが大好きで、家のリフォームなんかも自分でやってしまう、とにかくクリエイティブな人だったんです。美術の世界に入ったのは、そんな父に育てられたことが一番大きいですね。あとは、家が店舗デザインの会社をやっていて、そこでは武蔵野美術大学や女子美術大学、日本大学芸術学部出身の社員さんが働いていたんです。それで私もデザイン、とくに商業デザインに興味を持ちました。高校時代の担任の先生が女子美術大学の出身で、女子美について知りました。高校時代の美術の先生がのちに第一回安井賞を受賞する田中岑(たかし)先生で、田中先生に油絵を習いました。そして女子美術大学デザイン科に進学しました。

デザインから抽象画へ

女子美を出てから5年くらいデザインの仕事をしていたのですが、結婚して辞めました。出産・育児を経て子育てが一段落した40歳の頃、画塾を開きたいと思ったんです。当時通っていた油絵の教室に子どものための画塾をやってらっしゃる先生がいたので相談してみたら、「画塾をやりたいならもっと絵の勉強をしなさい」と言われ、その勉強のために美術文化協会への出品を勧められました。美術文化協会はシュールレアリズムの作品が多いのですが、シュールレアリズムは怖いイメージがあったし、そもそも抽象画なんて描いたことがありませんでした。そこで、抽象画の勉強と画塾を同時にスタートさせたのです。3回目に出品した作品で佳作賞をいただき、その後も安田火災美術財団(現・損保ジャパン美術財団)の奨励賞を受賞しました。そうしたら抽象画にやる気が湧いてきて、それからだんだん抽象画ばかりになっていきました。

音楽を題材に

当初は抽象画がよく分からず、どうすれば描けるか考えたときに「音楽」にぶつかりました。先ほどの佳作賞を受賞した作品も、音がきこえるような絵が描きたいという想いで描きました。ホイッスラー(19世紀アメリカの画家)も言っていますが、「絵は見る音楽、音楽は聴く絵」なんです。題名はあとからこじつけです(笑)。私はクリスチャンなので、「オラトリオ」「賛歌」「ノクターン」「プレリュード」などキリスト教音楽に関係のあるタイトルが多いです。また、家族に音楽をやっている人が多いんですよ。妹はリトミック指導者、姪はピアニスト、孫は口笛奏者、私自身もクラシックギターを嗜んでいます。音が聞こえてくるような絵を描きたいといつも思っています。

「賛歌」

三鷹を創作活動の場に

三鷹に来る前は浅草に住んでいたんですけど、父が私たちに家を買ってやろうというので場所を選ぶことになりました。こっち(三鷹以西)は田舎というイメージがあったので「せめて三鷹どまりにしてくれ」と頼んだら三鷹になったんです(笑)。三鷹は未だに田舎臭さが残っているところが好きです。あと、当時の三鷹は下水道の整備が日本一しっかりしていたところも良いですね。あの頃の三鷹市長がお医者さんだったからかしら。

創作活動を通した三鷹との関わり

私と三鷹との接点はやはり子ども達です。子どものための絵画教室を35年間やってきたので本当にたくさんの教え子ができて、教室をやめた後も連絡をくれたりします。錦鯉ばかり描いていた男の子が水産系の大学に行ったり、妖怪ばかり描いていた子が芸大に行ったり、東大を卒業して今では世界を股に掛けている女の子が「また絵を始めました」って連絡をくれたり・・・。年賀状で「また会いましょう」って言った子が本当に会いに来てくれたこともあります。昔、通っていた子たちが大きくなって訪ねて来てくれるのは嬉しいですね。教室をやっているから元気でいられます。主人が亡くなったり生活で壁にぶつかったときはアトリエや子どもたちの存在に助けられてきました。生徒さんの中にダウン症の方がいて、その子は小学生のときからここに来てるんですけど、31歳になった今も通ってくれています。この子が来てくれるうちは私も頑張らないと。子どもを通して三鷹とつながっているんだと思います。

インタビューを終えて

加藤さんのお宅に足を踏み入れた瞬間から、加藤さんの生徒さんに対する愛情が伝わってきて、とても温かい気持ちになりました。壁に飾られた子ども達の作品は本当に自由で、プロ顔負けの色使いが印象的でした。インタビューでも、これまで大変なご経験をされてきたにもかかわらず、どんな話題にも終始笑顔で丁寧にお話ししてくださり、そのお人柄に魅せられました。35年間アトリエで教え続けてこられたキャリアがその包容力の根底にあるのでしょうか。そんな加藤さんは三鷹の子ども達にとって掛け替えのない存在だと感じました。

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加藤恵美子 Emiko KATO (三鷹市上連雀在住)

<展覧会情報>

三鷹アーティスツネットワーク展

 会期:2015年5月12日〜5月17日

 会場:三鷹市美術ギャラリー

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インタビュー

2015年1月23日(金曜日)

Interview/Text 伊藤真矢子

Recoader 越川さくら

Photo 沼田直由

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"tsu-na-ga-ru"のインタビュー

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